恵比寿という地域性は客層については如何でしょうか。 |
 |
島田 |
イレールに来店されるお客様は比較的地元の方が多いですね。今年の3月で開店して8年になりますが、この辺は地元意識が強い地域だと思います。当然のことながら嗜好が高い上質なお客様が多く、料理自体のクォリティーが問われます。すぐそばに有名なグランメゾンが有るのですが、客単価が違うので全く競合はしませんね。自分としてはレストランを営業しやすい地域だと思います。 |
 |
島田さんがフランス料理を志された動機とは何でしょうか。 |
 |
島田 |
とにかく飲食業界に入ろうと思っていたのですが、料理ジャンルはあまり考えてませんでした。フランス料理の書籍を見て「なんて綺麗な料理だろう!」と感じたのが始まりですね。それからあまり知識も持たずにフランスに渡りましたが、今考えれば少し無謀だったかなと思います。フランス語もよく解らずけっこう苦労もしましたが「アルページュ」(三ッ星)等で3年程間修行をしました。「アルページュ」での経験が自分の料理に与えた影響が大きかったと思います。 |
 |
現在、島田さんがモットーとする料理哲学の基本は何でしょうか。 |
 |
島田 |
あまりフランス料理を意識し過ぎないで、日本のフランス料理を表現していきたいです。なるべく日本の食材を使って、野菜等は当然ですが、ワインも日本の物も多く用意しています。日本人に合った食文化としての、フランス料理をめざしたいと考えています。 |
 |
シュークリーム専門店や二子玉川のイレール・ドゥーブル等の店舗展開についてお聞きしたいと思います。 |
 |
島田 |
二子玉川の店は、ここよりもキャパシティー大きいし立派な店なのですが、恵比寿とは同じ料理は出していません。メニュー構成は任せているシェフの自主性を尊重しています。「野菜を中心にした体に優しいフレンチ」というコンセプトは同じですが、菊池というシェフに全て任せています。やはり料理長自身の料理でないと、「魂」が料理に入らないし、力も入らないと思います。私は基本的に、「スタッフがまず重要」という考え方です。その店を任せたシェフを信じなければ、店舗展開をしていくのは難しいと思いますね。それからシュークリーム専門店を始めた理由は、フランス料理というカテゴリーはピラミッドの一番上の料理だと思います。我々フランス料理人は素晴らしい技術を持っているのに、限られた一部の人達の料理になっているは惜しい気がしました。フランス料理人の技術をもっと広く、リーズナブルに伝えたいという気持ちから「シュークリーム」という発想が生まれました。今、キオスクに入ったりしてますが、今後もいろいろな展開を考えています。それがフランス料理の裾野を広げる事になると私は思います。 |
 |
今後の東京のフランス料理の方向性をどのように考えていますか。 |
 |
島田 |
これからフランス料理界は益々厳しくなると思いますね。今、20代の若者の食の志向も気になります。それとかつてはフィュージョンやコンチネンタル料理のレストランは「美味しいレストラン」は少なかったけれど、今はかなりいいレストランが増えています。美味しくないフレンチレストランは間違いなくやっていけないし、今、若手で頑張ってる店はみんな各々美味しい店です。そしてフランス料理店の店舗展開の方向性は、これからは都心から郊外に移っていくと考えています。私は埼玉の川越出身なので、いずれは川越に出店したいと考えています。これから高齢化社会になることを考えると電車に乗って遠くのレストランに行くより、「家の近くの手頃で美味しいお店」というニーズに変わると思います。 |
 |
料理人をめざす若手料理人になにを求めますか。 |
 |
島田 |
とにかく食べて覚えて欲しいです。最近は味見もしない若いスタッフもいます。今の料理はエルブジ等の影響もあって幾何学的で見た目も美しくなっているので、若い子達は盛り付けは旨くなっていますが、味に対する意識が薄い気がします。本やインターネットで情報は持っていて、技術の習得には積極的なのですが、いろいろな店を食べ歩く積極さが足りない。ですから私は若い人達に食べる事にもっと興味を持ってほしいと思っています。 |
 |
貴重なお話をありがとうございました。島田さんの今後のご活躍を期待しております。 |
 |