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ミュージーアム・フード

 ベルギーのブリュッセルにある王立美術館にはミュージーアム・カフェ、ミュージーアム・ブラッスリ、ミュージーアム・ショップがある。美術鑑賞に来た人たちがそれぞれの要望に合わせて食事を楽しめるスペースだ。「美術館でおいしい食事なんて」というのも今は昔。最近ではここだけではなく英国のリバプール美術館やヴィクトリア・アンド・アルバート美術館など、おいしい食事を楽しめる美術館が増えている。
 このミュージーアム・フードを作り出したのはミシュランの三つ星レストラン、ホフ・ファン・クレーフのオーナーシェフ、ピーター・ゴーセンスだ。彼は、美術館に来館する人たちの多くは時間もないし食事にお金をかけたいとも思っていないと考え、軽食を安価で提供するミュージーアム・カフェをオープンした。メニューは簡単に食べられるサンドイッチや巻き寿司、スープ、ベルギーチップ、イタリアンパスタなどが中心だが、そのほかにもベルギーステーキとチップス、それに好きなものを選んで目の前で作ってもらえるサラダもある。午後はティールームになり、チョコレートムースやカンノーリを楽しむこともできる。
そして、今年2月には、もっときちんと食事をしたい人のためにミュージーアム・ブラッスリもオープンした。ここでは伝統的なベルギー料理をゴーセンスがアレンジした本物のベルギーの味を堪能できる。ウナギのグリーンソース、子牛の腎臓にヘントマスタード、若鳥の串焼きなどで、どれもフライドポテトがつく。ディナーは2人で約1万2000円(食事のみ)となかなか手頃だ。
ミュージーアム・ブラッスリも人気を集め、その後ミュージーアム・ショップ内にコーヒーラウンジも作られた。こちらは美術鑑賞にちょっと一息つきたい人のためだ。
素晴らしいのは食事だけでない。内装はカンカユリーやベルガ・クウィーンなどのレストランのデザインも手掛け、高く評価されたアントワーヌ・ピントが担当した。ミュージーアム・ブラッスリはエレガントな装飾のダークブラウンでまとめられている。
美術館で世界の選り抜きの美術を堪能したあとは、ベルギーで最高のシェフが作る料理を落ち着いた空間で味わう。1つの芸術的な空間で美と美食を心行くまで満喫する。それが今ヨーロッパではトレンドになりつつあるのかもしれない。

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郷土料理に新風を

 ドイツと言えばじゃがいもとザワークラフト、ソーセージそれにビール。そんなイメージが一般的で、そこに美しさや味の繊細さ斬新さは想像しにくかった。だが、このような先入観を覆すような新しいドイツ料理が今、ドイツではひそかなブームとなっている。
 郷土料理を大切にしながらも、そこに新しいエッセンスを加え、従来のドイツ料理とは想像もつかないものを作り上げる。これは郷土料理の価値の見直しでもあり、新たな挑戦とも言える。
 ミュンヘンにあるレストラン「エーデラー」のシェフ、カール・エーデラーが提供する料理はシンプルでありながら洗練されている。季節感あふれる地元でとれた素材の質と香りを大切にした料理だ。バイエルンの伝統的な料理を尊重しつつ、繊細さと創造性をそこに加えることで料理に高級感を出す。それには魚介類も重要な役割を成す。メニューは季節と厨房スタッフの気まぐれで変わる。一例としては、パンプキンのマリネにシイタケ、パセリの根、タコを添えた前菜。メインディッシュには、子ガモの胸肉のローストにマッシュポテト、レバーのスモークソーセージなどが出る。野菜はすべて提携農家でとれた新鮮なものを使用するというこだわりぶりだ。
 フランクフルトのレストラン「シルクベッド」のオーナーシェフ、マリオ・ローニンガーは「エーデラー」とは全く違う切り口でドイツ料理を表現する。レストランはすべて白で統一され、白い巨大なレザーのベッドが置かれている。古代ローマでは食事を横になってしたことにならって、客は横になって食事ができるようにしてあるのだ。照明、音楽すべてがリラックスした雰囲気を醸し出す。そこで出される料理はすべてシェフのお任せ。客全員が同じ料理を食べる。料理を出すタイミングも計算しつくされている。カニクリームとホースラディッシュが入ったワッフルコーン。液体窒素で急冷凍して固めたシャーベット、オーガニックの卵を62度で1時間温め、マッシュルームを添えたものなど、どの料理をとっても意表を突くアイデアにあふれたものばかりだ。
 ドイツの料理を基本としながらも、新しい風をそこに吹き込むシェフたち。これまで食することのなかったドイツの新しい味を人々は惜しみなく評価し、楽しんでいるのだ。

http://www.restaurant-ederer.de/index.html
http://www.munich-info.de/restaurants/ederer/welcome_en.html

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イーストビーチカフェ

 水平線がはるかかなたに見える広大なビーチで、のんびりとした静かな一時を過ごしたい。だが、ビーチにあるスタンドでの食事は落ち着きもなく、味を楽しむものとは言い難い。それに海風が強い日や太陽が照りつける日などはくつろぐどころではなくなることもある。
 ウェストサセックス州リトルハンプトンのビーチにあるイーストビーチカフェはこのような問題をすべて解決してくれる。まず驚かされるのはトーマス・ヘザウィックがデザインした建物の外観だ。長さ30メートル、高さ5.5メートルのこの建物は巨大な流木をイメージして造られた。デザインだけでなく素材も海風や潮にも強いものが使われ、耐久性も十分だ。大胆な外観に対し、内装はシンプルで爽快。天井からつながる白く波打つ壁は、まるで波の中にいるような気分にさせてくれる。カフェの南側は全面床から天井までのガラス戸となっており、ビーチの景観を独り占めでき、開放感も抜群だ。室内の60席のほかにデッキにも80席あり、天気の良い日には外での食事も楽しめる。
 もともとここにはビーチのフードスタンドがあった。それを2005年9月にジェーン・ウッドと娘のソフィー・マレーが買い取り、ここをビーチの特別な空間にしようと考えた。これまでのビーチスタンドのイメージを覆すこのアイデアは、リスクを伴うものだったが、壮観な造りが人目を引き大ヒット。リトルハンプトンを訪れる人々の観光スポットとなっただけでなく、オールシーズンここで景観を楽しみながら食事したい英国人固定客もついた。
 料理はリッツホテルとドーチェスターホテルでの経験を持つデイヴィッド・ホワイトサイドが担当している。英国のビーチの代表メニュー、フィッシュ・アンド・チップスはもちろんだが、アーティチョークのペンネやムール貝のマリネなどのビストロ料理も楽しめる。魚介類はできるだけ季節感のある地元で取れるものを提携業者から仕入れている。
 季節や天候を問わず、海を間近に感じて食事ができる空間。これまでとは違ったビーチの楽しみ方がここにはあるような気がする。

The East Beach Cafe
Littlehampton West Sussex
BN17 5NZ United Kingdom
T +44(0)1903.731.903
http://eastbeachcafe.co.uk/index.html

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北欧料理のレストランと言われてもなかなかピンと来ない。だがデンマークに急成長しているレストランがある。「北欧料理のショーケース」とも言われ、地元で取れるものしか料理には使わないなど、いろんな意味でこだわりのあるこのレストランNomaは、一度行ったら忘れられない魅力を持っている。ミシュランでひとつ星を獲得したレストランというのも当然といえる。
Nomaはクリスチャンハウンの倉庫街の最端。殺風景でありながら古い色とりどりの建物や運河が見えるコペンハーゲンの中でも最も雰囲気のある場所にある。古い食料倉庫を改造した店内は広々としており一見簡素だ。木目が見える木のテーブルやすすけたオーク材のいすには動物の毛皮がかけられ、ろうそくのやさしい灯りが暖かい気持ちにさせてくれる。
驚かされるのは個性的な料理とその演出。ローストチキンや魚の皮、ポテトのチップ スを木の枝の節に無造作に刺したもの。パンのかけらとオキザリスの葉をちりばめたタルタルステーキ。アイスランドのエイの酢漬けにエルダーベリーとビネガーゼリーキューブそれにムール貝の泡ソース。ポーチドペア、クルミ、バーベナと一緒に出されるシカ肉。料理につくマッシュルーム形のパンは革紐で縛った粗い布袋に入れられ、アイスランドのチーズSkitとスパイシーなラードをつけて食べる。生クリームに干草の灰をかけたホタテ。そしてデザートはクラウドベリーシャーベット。料理に合ったワインのセレクションも用意されている。シェフRene Redzepiは料理だけではなくスタッフと客の隔たりをなくした和やかな空間を作ることにも心を配る。
Nomaの料理には自然からそのまま持ち帰った雰囲気に加え芸術的な美しさがある。清楚でモダンでありながら伝統も尊重している。レストランの目指すものがしっかりしておりそこにプライドさえ感じられる。料理の限界と思われているところから逆に新しいものを生み出す凄みがNomaにはあるのだ。

CP:NOMAの外観。クリスチャンハウンのどんづまり、やや分かりにくい場所です

NOMA(ノマ) Strandgade 93 1401 Copenhagen K
Tel: +45 3296 3297
Lunch: Tuesday-Friday:
    12.00 am to 1.30 pm (12.00 to 4.00)
Dinner: Monday-Saturday:
    6.00 pm to 10.00 pm (6.00 to 1.00)
http://noma.dk/

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料理法はここ10年間で随分進化し、料理に対する見方まで変わってきている。その料理に対する先入観をも覆すのが2005年の「世界のベスト・レストラン」で堂々1位、今年は2位に輝いた「ザ・ファットダック」のオーナー、ヘストン・ブルーメンタールだ。
意外性をつく彼の料理法とはどんなものなのだろうか。ブルーメンタールの料理は単に舌で感じる味だけにとどまってはいない。人は料理を舌で味わうだけでなく、感覚や視覚などあらゆる刺激から味わい感じる。そこに着眼したところから彼の美味しさへの無限の探求が始まった。
その料理がどのような色をしているか、どのようにして出されるか、どんな香りがするか、どんな音がするかにより食べる者の味わい方が違ってくる。たとえばガムをかむとき匂いがなくなってしまうと実際には味は残っているにもかかわらず、味もなくなったように感じてしまう。白ワインを赤く染めたものを出されると、赤ワインの味と錯覚してしまう。このように視覚・嗅覚など感覚や潜在意識が料理を味わうことにも影響することを逆手にとり、ブルーメンタールは数々の意表をついた料理を生み出した。ベーコンエッグという朝食の代表的な料理をアイスクリームにしてデザートとして出す。エスカルゴのポリッジ。とても結び付きそうにないものを合わせることで1つの料理を作る。美味しさの意味を広げることで、料理の可能性も無限に広がっていくことをブルーメンタールは味を通して教えてくれる。
化学や物理学・心理学をも組み込んだ彼の料理法は「科学料理」とか「分子料理」という名でくくられることが多い。だが実際には、伝統的な料理の基盤の上に成り立った美味しさへの探求の賜物と言うのがふさわしい。「新しい料理へのアプローチとしてその一部だけが過度に強調され、もてはやされ、ほかのことがないがしろにされてしまうのは問題だ。常に基本は伝統的な料理で、完璧な料理を目指す料理人はそれを知り、マスターしなくてはならない」と彼は言う。料理の基本原則―完璧さ、開放性、清廉さを守り、伝統を大切にしながらも新しいものを生み出すことにも積極的で、料理を通して人々に影響を与える。それこそがブルーメンタールが求めて止まない料理法なのだ。

http://www.fatduck.co.uk/

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最高の料理を雰囲気のあるレストランで。これは誰もが望むことだ。だが、ミシュランの星がつくようなレストランに誰もが行けるわけではない。多くの人にとってはこのようなレストランは高根の花だし、正装してマナーを考えながらの食事に気が引けてしまうことも多いだろう。
外食が一般化している今、誰にでも気軽においしい料理を食べてもらおうという動きが欧米のレストラン界では進んでいる。最高級シェフとして名高いジョエル・ロブション、ロブ・フィーニー、スーサー・リー、ジェミー・ケネディ、ゴードン・ラムゼイ、フェラン・アドリアなどがジーンズでも入れるようなカジュアルなレストランやパブをオープンしている。カジュアルだけどセンスのあるインテリア。最高級シェフの料理でありながら価格は半分にすることで、客層を広げることに成功したのだ。
スペインのエル・ブジのシェフ、フェラン・アドリアはファーストフードレストランFast Goodをオープンした。天才シェフ、フェラン・アドリアがハンバーガーを作るなんて誰が想像しただろう。だが彼は「完璧なハンバーガーを作ることもチャレンジだ。どんな料理にも私は魅了される」と言う。メニューはハンバーガーやパニーニ、サラダ、フライドポテトなど、普通のファーストフードで売られているもの。ハンバーガーが7ユーロ(約1000円)と少し高めだが味の良さで人気を集め、マドリッドを中心に店舗を増やす予定だ。  
英国のゴードン・ラムゼイは英国、米国そして東京にもレストランを持つミシュランの三つ星シェフ。彼も今年3月に手頃な価格で英国の伝統的料理を中心とした食事とアルコールが楽しめるパブThe Narrowをオープンした。ドックマスターの家として20世紀の初めに建てられたものを改装。その歴史を感じさせる空間でラムゼイの料理を手軽に楽しむことができるため、開店以来予約はいっぱいだ。そしてこの秋には2つ目のパブThe Devonshireも開店する予定だ。彼はまさに温もりのあるリラックスしたなかで、おいしい料理とドリンクを楽しむことを実現したのだ。
この新しいトレンドThe New Upscaleにより、ほんの少しコストを上載せすることで、より多くの人が身近に世界最高レベルの料理を楽しめるようになった。本当においしい料理をできるだけ多くの人に。そして、どんな料理であっても最高の味を提供しようするシェフたちの意気込みがそこには感じられる。

Fast Good
http://www.nh-hotels.com/site/fastgood/en/home.htm

The Narrow
4 Narrow Street, London E14 8DP 020 7592 7950
http://www.gordonramsay.com/thenarrow/

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